映子という女

62/74
前へ
/273ページ
次へ
日々が過ぎてゆき、麻子が成人した。 そして「天人くんと結婚したい」と、告げてきた。 もちろん反対などなかった。 少し年老いた彗星舞人と百合絵さんの家へと、嫁いでいった。 「二人だけに、なっちゃったね」 自宅のリビングで映子が言った。 「そうだね、寂しい?」 「寂しいけど、私、すべきことがあると思う」 「なに?」 「人と魔物を殺してきた罪の償い」 「どうするというの?」 「天人くんに幽閉してもらう。 私ね、願いが達成できたのよ。好きな人と自由に暮らして、 愛する娘と一緒に過ごせた。もう思い残すことは無い」 「映子、そこまでしなくても」 「感知してる筈よ、私は人を殺し続けてきた。 麻子を酷く傷つけてふった彼氏、麻子を襲おうとした男、 麻子につきまっとっていたストーカー、それから......」 「映子、もういい、わかってた、わかってたよ」 「日並くん、私を愛してくれてありがとう」 「さよならするしか、ないのかな」 「さよならが愛の証し。私にできる精一杯の」
/273ページ

最初のコメントを投稿しよう!

5人が本棚に入れています
本棚に追加