人を殺せる女

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東京にきて半年の僕には、渋谷のハチ公前でも戸惑った。 渋谷駅自体が広すぎて大変だった。 それでもどうにか、ハチ公像を見つけることができた。 丸い鉄のパイプにもたれて『風子』という女の子を待ってみる。 周囲はハチ公と写真を撮ったり、ハチ公を撮ったりと忙しい。 人が大勢、集まっていて、人を避けて撮るのが難しいのた。 ヨトと辰巳は離れた場所に身を隠している。 「日並刀麻さん?」 声をかけられた。 ウェーブのかかった茶髪の女の子で、ふっくらとした小柄な体型だった。 花柄ワンピースの上に水色のカーディガンを着ていて、茶色のパンプス。 赤いショルダーバッグを斜め掛けしているので、胸のふくらみが目立つ。 「映子が言ってた通り、可愛い顔の男の子ね」 「そんなにかな?」 「可愛い、そのちょっと長めの髪型も似合ってるし、目がクリクリしてる」 「赤塔映子は?来ないの?」 「命を狙われてるのに来るわけないでしょ。さあ、場所を変えよう」 「どこ行くの?」 「カラオケボックス」 そうして二人は歩き出した。 ヨトと辰巳も移動した。
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