人を殺せる女

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「魔物に売られたことが幸せ?」 風子のコンプレックスは、聞いていて理解できたけれど、映子が 幸せというのは、理解できなかった。 話しながら食べていった食事が目の前で空になっている。 風子はそれでもメニュー表を眺めている。 「すごく幸せだと思う、だって学校に全く行ってないのよ。 しかも欲しいものは何でも手に入る生活だった」 「たとえばさ、赤塔映子が誰かを好きになったとしても、 もう嫁に行く先は決まってる。これって幸せ?」 「映子は幸せよ、あの美の女神が、幸せになれないわけない」 「ものすごい執着だね」 「そうよ、だから、あたしは映子を守る」 風子がソファーから立ち上がった。 「メニューはもういいの?」 「もういい。食パン一斤にスィーツが詰まってるの、食べられたから。 あれね、ひとりで全部、食べてみたかったの」 風子がカラオケルームのドアを開けた。 「ついてきて」 「は?」
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