人を殺せる女

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辰巳がよろけた。 「太ってるなんて醜い、痩せたいのに食べる自分が嫌い、 そんな自分が嫌い、だからね、 自分なんていらないのよ、映子に全部あげる」 辰巳は腹より首の出血のほうが酷かった。 「だからって、人を殺すのか?」 僕は辰巳に駆け寄ったが、応急処置できるとは思えなかった。 「そうよ、映子を殺させない」 ヨトは真顔で立ち尽くしている。 「こうなる流れを知らせてきたのは、テウスか?」 ヨトが言った。 「そうよ。カラオケルームで待機するって」 「あちらのほうが力が強かったか。すまない、直純、助けてやりたかった」 直純は血まみれでよろけながらもソファーを手で掴んで立ち上がった。 「こ、殺す、赤塔映子、殺す、こっ、殺してくれ」 口からも血をながしながら辰巳が言ってくる。
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