人を殺せる女

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やがて風子の殺人事件の判決が出た。 死刑だった。 僕は判決が出る前に風子に面会したことがある。 ガラス越しに対面した彼女は少しだけ瘦せ始めていた。 「ごはん、おいしいわよ。ただね、不満はある。 あたたかいごはんが食べられないのよ。注文はできるんだけど、 注文ばっかりしてもねえ」 「幸せ?」 「え?」 「映子の為に死ねることが」 困惑気味な顔をしつつも風子は笑った。 「幸せだけど、映子はどうなのかな?一人で足りるかな?」 「わからない」 風子が身を乗り出してきた。 近くでみつめた風子の目には絶望を感じられなかった。 別の不安げな気持ちを見て取れた。 「日並くん、映子が好き?嫌い?」
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