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三駅ほどで降りて、見知らぬ街を歩く。
駅前だけが賑わう感じの質素な場所だった。
「あそこ、行きましょう」
映子が指さしたのはラブホテルだった。
「そういうつもりじゃなかったんだけど」
僕は、あからさまに戸惑った。
「私だってそうよ、ただ話しがしたいだけ。
朝まで、もしくは眠くなるまで」
「まあそういうことなら」
と、フロントで最も地味な部屋を選んで入った。
「汗を流せるし、飲み物があるし、話すには最適でしょ?」
映子がダブルベッドの上に座り、僕はソファーに座った。
「壁が真っ赤な部屋なんて落ち着かないけどね」
映子はベージュの寝具の上で笑った。
「日並くん、何か飲む?」
「いや、それより君の話しが聞きたい。なぜ人を殺せる?」
「母親が魔物に娘を売ったのよ。あたしは28歳で魔物の嫁になる」
「は?」
「その魔物にもらった力で、人を殺せる」
「もっと詳しく聞きたいな」
「いいわよ」
そうして映子は話し始めた。
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