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「おまえの娘は大人になったら、俺の好みの女になる、よこせ」
ラブホテルで、やることが済んでからだった。
普通のサラリーマン風だった男が、突如として牙を生やし、額の両側から
二本のツノを出して言ったのだ。
母親の本業ホステスだが、客を誘い込み娼婦としても働いていた。
着痩せした男は脱ぐと鍛え抜かれた身体で、ベッドテクニックでも
上級だった。
極上の快楽の余韻に浸っていた母親は、別の意味で驚いた。
「あたしより娘がいいってこと?」
ちなみに娘は五才だった。
その子が大人の女になって男に抱かれる姿は想像できなかった。
「よこすのなら、おまえに富を与えよう。
もうこんな仕事をしなくてもよくなるぞ」
一気に心が動いた。
ホステスも娼婦もやりたくてやっているわけではない。
「あげるわ。あたしの娘」
「よし、明日から一緒に暮らそう」
そして本当に、トタン屋根に雨が響いてうるさい古いアパートから、14階のマンションに引っ越した。
娘の映子も、はしゃいでいた。
「お姫様になったみたーい!」
牙とツノを隠した男が微笑んだ。
「映子ちゃんは、これから外に出てはいけないよ。
それこそ、とらわれのお姫様だ」
「え?」
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