人を殺せる女

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「要するに僕が殺そうとしたらマウが止めるわけだ」 「そういうことになりますね」 「マウ、コーヒー、淹れて」 映子が言った。 「日並くんも飲むかい?」 「あ、お願いします」 「オッケー」 マウが台所に立った。 迷わない手つきなので、何度も来ているらしい。 「カフェラテが飲みたい」 映子がつぶやいた。 「ブラックのみなんだろ?」 「そうよ、そういう生活。そこから28歳で人間としての成長は、 止まって、不老不死になる。そしたら食事制限もなくなる。 はやく28歳になって嫁になりたい」 「そうすれば殺されなくなる」 「そういうこと。もう決まってるんだから、ほうっておいて。 首を絞められたとき、本当に苦しかった。あんなの、いや」 「君に殺された人たちは?どんな痛みと苦しみだったと思う? 残された人たちは、どんな悲しみと苦しみだと思う?」 「それが私が死ねば全員が満足するっていうの?しつこい!!」 映子が起き上がって叫んだ。 綺麗に整えた眉が吊り上がり、眉間にシワを寄せた。
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