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「いらっしゃいませ、お待ちしておりました」
長い髪をアップにまとめた美女に迎えられた。
僕は今日、マウの家に招かれている。
都内の洋風な一軒家で、外にガラスのオブジェがデザインされていた。
もちろん中身も綺麗で、上質なスリッパを出されて足がもぞもぞする。
そしてリビングのソファーに座り、紅茶を淹れられた。
「テウ、いや、人間のときの名前は寺島正樹(てらしま まさき)
こちらは、妻の美菜(みな)それと、一人娘の江里菜(えりな)」
テウは長く青い髪を黒い短髪にしている。
たぶん、人の世界ではそうしているのだろう。
「おにーちゃーん」
ソファーに座った三才くらいの女の子が小さな手を振ったので
振り返してみた。
両方で編んでいる三つ編みを揺らして笑って、ドーナツを食べる。
「こういう言い方をするってことは、美菜さんは旦那さんのことを」
「はい、人間じゃないと知った上で結婚しました。
江里菜は人間と魔物のハーフです」
僕は江里菜ちゃんを見た。
両手でドーナツを持ってかじりついて、目だけで笑ってきた。
「ごく、普通の子なんですか?」
「ちょっと勘がいいくらいの子です」
「そうですか」
メモのたくさん貼られた冷蔵庫、リビング絨毯に広がるオモチャ。
裕福で幸せな家庭そのものだった。
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