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「おにーちゃん『うまっ』て、言う」
江里菜ちゃんがドーナツを噛んで飲み込んでから、口に砂糖をつけて
言ってきた。
「んー?うまっ!」
出されたドーナツをかじって僕は言った。
「なるほど、勘がいいか、それにしてもおいしいドーナツですね!」
「スィーツ専門店で買ったものだから」
美菜さんが紅茶を口にする。
着ている服にしても高価なものだとわかる。
それは江里菜ちゃんの服にしても。
「魔物はね、お金を操るのが上手いんですよ。株とか感知できるから、
会社勤めとかしなくても、この家が買えたくらいなんです。
あたしね、貧しい家庭に育ったのよね。映子って人と似てる」
「裕福さに魅入られて結婚したと?失礼なことをすみせん」
「いいんですよ、その通りだから。あたしの容姿を気に入ってくれてね。
玉の輿ってわけ。あたし、両親のこと大嫌いだけど、
魔物に惚れられる容姿にしてくれたのは、感謝してるんです」
そうして親に仕送りもしているそうだ。
父親の勤める会社が上手くいかず、給料が下がり、経済的に苦しくて
ケンカばかりしていた両親。
それがいまでは仲良し夫婦らしい。
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