人を殺せる女

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もう映子のマンションには戻れない。 かといってヨトと彗星を追う気もなれない。 公園をみつけてベンチに座る。 男女の口論が聞こえてきた。 どいつもこいつも、どうしてそんなに揉めてるんだ。 「うそつき、奥さんと別れるって言ったじゃない」 「かんべんしてくれよ、そんな簡単にはいかないよ」 「あたしのこと、もう愛してないのね」 「あのさあ、お互い楽しんだ、それでもういいだろ」 「結婚してよ」 「無理だってば」 そんなこと言ってると、殺されるぞ。 「誠実でない男性なんて生きる価値なし」 聞きおぼえのある声がした。 「ほら、これを持って」 声のほうを見ると、マウが女性にナイフを持たせていた。 「心臓より首のほうが、やりやすい、ほら、切って」 僕は駆け出して女性の手を叩いてナイフを落とさせた。 「こんな男のせいで不幸せになっちゃいけない、忘れろ!」 僕が言うと、女性は逃げるようにして走り去った。 「あんたも消えろ!」 僕に言われて男も走っていった。 「マウ、あんたも消えろ」 「手厳しいですね」 悪びれた風にマウが両手で万歳のポーズをした。
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