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「わかっています。江里菜が言ったんです『パパ、ばいばい』って。
昨日、なにもない空間に向かって手を振りました」
僕はマウの自宅を訪れている。
マウの死を知らせる為だった。
「葬儀とか、できません。魔界の風に舞って塵に......」
「そうですか、わかりました。
うちは大丈夫です。経済的には一生安泰くらいの財力はあります」
「いや、あの、そういうことでは」
「そういうことです。他に何か?」
「あの、マウさんがやっていた別のこと、知ってたんですか?」
リビングの毛布で眠っている江里菜ちゃんを確認してから言った。
「知ってました。うちは隠し事は無しの夫婦だったんです」
「そんな旦那さんでも、愛していたんですか?」
「そうですよ。だって、あたしたちの生活には関係ないし、
あたしたちの生活に影響はないから」
「そんな.......どうして」
どうしてそんなに淡々と話せるんですか?
「日並さん、私は、いまの、この生活がすべてなんです。
それをくれたマウを愛し続けていられます」
どうして......。
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