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牢屋の中が映子のマンションそのものになっている。
玄関だけがなく、キッチンとバスルームと寝室、自室、洗濯機や
電子レンジも使える。
欲しいものはメモ書きして渡す。買う店の名前まで書く。
セオはさすがに「買い物係になりたくない」と、僕にやるように
言ってきた。
それはそれで正解ではあった。
映子と同棲していた時期があったので、映子が買い物をする店を
知っていたし、映子が買っていた物も知っていた。
「はい、今日のぶん、良い匂いがするね」
牢屋の鉄格子の一部に長方形の箇所があり、そこから品物を入れる。
もちろん人が抜けられるスペースではない。
「夕飯を作ったところなのよ。食べていかない?」
「中に入られないよ」
「この差し入れを受け取るスペースから皿を取れるでしょ。
待ってて、いま盛るから」
そしてキノコとレタスのソテーを皿に乗せ、フォークも渡してくれた。
「うん、おいしいよ、レストランの品みたいだ」
「外食したい......でも、いつもの店で買ってきてくれて、ありがとう」
映子が布バッグの中身を整理している。
幽閉されて半年が経っていた。
美容院で綺麗に整えていた髪が無造作に伸び始めていた。
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