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ネットで外の情報は知れた。
知れるからこそ、空しくもなるのだと映子は言った。
僕はテウスに会いに屋敷へと向かった。
細長い食卓用テーブルに座って赤ワインを飲んでいた。
床に赤ワインの瓶を何本も転がして。
いつも黒いスーツで真っ直ぐに悠然と立ち尽くしていたテウスが
テーブルに肘をついている。
彼は彼で変わってしまった。
「映子のこと、あきらめるつもりですか?
このままだと28歳を過ぎて年老いていきますよ?
あなたの理想でなくなりますよ?」
テウスは黙っている。
「もう捨てるんですか?未練はないんですか?」
「なかったら、こんな飲み方はしないよ」
ようやくテウスが口を開けた。
「飲んでも飲んでも酔えないんだ。なにもかも忘れたいのに」
「現実は待ってはくれませんよ」
「そのようだな」
テウスが立ち上がったが、猫背になっていた。
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