六月の雫

13/27
前へ
/27ページ
次へ
 Kにライターを借りて、不慣れな手付きで巻きタバコに火を付けた。  タバコは辛いと父は言っていた為、それなりの覚悟で吸い込む。  が、口には甘い香りが広がり拍子抜けした。  更に体がふわふわし始め、今までに感じた事もない様な楽しい気分になる。  (後にこれが大麻だという事を知った)  Kの言う通り、確かに今なら勝てそうだ。  どこからかそんな自信が湧いてくる。  残りの金を全て注ぎ込む。  今度こそ負けない!!  (まばた)きも忘れるほど、僕はじっと自分の手札を見つめた。  そして内心でガッツポーズをする。  勝てる!!  今度こそ大金を!!!  僕の期待は裏切られなかった。  金は倍となって返ってきた。  金は手に入るし僕の才能も証明された。  笑いが止まらないとはこの事である。 「な?良いもんだろ?」  タイミングを見計らってKは僕に話しかけた。 「ああ!!最高だ!!」  僕も満面の笑みでKに答えた。  そして運勢はここで尽きる事もなく、僕は有終の美を飾った。  ポケットの中に入っている金の重さを感じながら、僕は昨日と真逆の気持ちで帰路についた。 「賭博ってこんなにも楽しい物だったんだな」 「分かってくれて良かったぜ」  Kは軽く僕の肩を叩いた。 「なあ、明日も参加して良いか?」 「もちろんだ!!てかあんなに悔しがる兄ちゃんの姿、初めて見たぜ。今頃お前を加えたのを後悔しているんだろうな?また見たいもんだ。という訳で、頼んだぞ」  Kは意地悪そうに笑った。 「任せとけ」  すっかり有頂天になった僕はKに誓う。  そして明日の集合時間だけ決め、その日は別れた。
/27ページ

最初のコメントを投稿しよう!

13人が本棚に入れています
本棚に追加