六月の雫

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 家に戻ると、父も帰って来ている事に気付く。  父と母とRの三人で仲良く談笑していた。 「おかえり、遅かったな」 「一回戻って来たんだけどね。友達に用があってまた出掛けたんだ」  何食わぬ顔でそう告げ、僕はさっさと自分の部屋に戻った。 「ねえ、昨日からあの子変だわ」 「反抗期じゃないのか?こういう時は放っておくのが一番だ」 「反抗期でもあの態度は無いよ。姉さんは優しすぎるの。私が姉さんの代わりにびしっと言ってやる」  父と母とRのそんな話を小耳に挟みながら。  いつもの僕ならむっとしていたのだろう。  だが今の僕は忙しい。  何しろ明日にもがあるのだ。  あのタバコの効果が切れる前に策を練らなければ。  才能のある僕が策を練るのだ。  どんな賭け事もきっと百戦百勝である。  明日の勝利を夢見ながら、僕はにやけた。  ところが僕の考えは甘かった。  寝て起きたらタバコの効果は切れていて、今までに感じた事も無いほどの気怠さに襲われる。  起きたく無い。  動きたく無い。  何もしたく無い。  布団からも出られずにいた。  タバコの副作用がこんなに大きいなんて聞いた事が無いぞ。  少なくとも父がタバコを吸っていなくともこうはなっていなかった。  何とか体を起こして着替える。  母に体調が悪いとだけ伝えて、学校は休んだ。  もう一度布団に戻り、どうすればタバコを手に入れる事が出来るのかについて考えた。
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