13人が本棚に入れています
本棚に追加
そんな母に構わず、頭に血がのぼった僕はRの悪口をペラペラ話す。
Kや賭場にいる男達の会話を聞いたせいか、悪口は自然と口から出た。
「Rなんてこの世から消えれば良いんだよ」
僕が何気なくこの言葉を口にした瞬間、大きな音と共に強い衝撃が頬にくる。
目の前が暗くなったり明るくなったりしているうちに、気が付いたら僕は床に座り込んでいた。
一瞬何が起きたのか分からなくなる。
が、じーんと頬から伝わる痛みに、母のやや赤くなった手を見て、僕は打たれたという事に気が付いた。
「Rちゃんが何をしたって言うの」
母は両目に一杯涙を為、震える声で言った。
だがそんな母の言葉よりも、母が僕を打ったという事の方が衝撃的であった。
怒ると黙って泣くだけの母。
怒鳴る事がなければ当然手を上げる事もない。
それに加えて父も穏やかな人であった為、僕は今までに殴られた事も、ビンタを食らった事も無かった。
人生初のビンタは、痛みよりもショックの方が大きかった。
人の悪口を平気で話す子に育ては覚えはないわと涙を流す母。
だが僕には理解でき無かった。
何故、僕が打たれなければならない。
悪いのはRの筈なのに。
Rの悪口を言って何が悪い?
母にとって、息子よりもRの方が大事なのだろうか。
Rの悪口はビンタに値するのだろうか。
Rのせいだ。
全てはRのせいだ。
最初のコメントを投稿しよう!