六月の雫

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 丁度その時、父が戻って来た。  側にはRが控えている。  泣いている母を見て、二人とも困惑していた。 「大丈夫か?」 「姉さんどうしたの?」  二人は慌てて母を宥める。  揃いも揃って……。  僕はその光景に吐き気すら覚えた。  一刻も此処にはいたく無かった為、僕はそそくさと自分の部屋に戻った。  その日から僕はますます遊びにふける様になった。  Rは毎日の様に家に来るからだ。  だからあの家には帰りたくなかった。  タバコをくわえて賭け事に没頭する。  男達は酒を飲んでいたものだから、僕とKも自然と口にする様になった。  美味しいとは思えなかったが、一時的に全てを忘れさせてくれる最高の代物だ。  酒は思考能力を弱まらせる。  賭け事には不向きだ。  そんなものだから段々と負ける事が増え、手持ちの金が減っていった。  それに加えてKからはタバコが大麻だということを知らされ、続けて吸いたければ金を渡せと言われた。  汚いなと思う。  この時の僕はもう大麻なしでは生きられないところまで堕ちていたのだ。  小遣いも貯金も全て注ぎ込んだが、全然足りなかった。  手持ちの金はゼロを通り越して負の方にいく。  気が付いたら五十万の借金を抱えていた。  金が無いなら来んなと賭場の男達に追い出される。  Kへの借金返済も滞っており、明日までに返さないとお前の親の事務所にお前の犯罪を全てバラすぞとまで言われた。  でも一番酷いのは、両親に迷惑がかかる事よりも、賭け事、大麻をやれなくなる事を危惧していた自分だった。  僕はきっと相当狂っている。
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