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やがてKは震える手をポケットに突っ込み、五百円玉を二枚取り出した。
「金は貸す。やるか?」
この悪魔の囁きに惑わされなければどれほど良かったか……
だがこの時までには理性は削られて、誘惑に勝てるはずもなかった。
徐にKの手から一枚の五百円玉を受け取る。
泥沼への第一歩だ。
頭では分かっていた。
お金を賭けるのは犯罪だという事を。
だが───
数人の男は友達の姿を見るとスペースを空け、手招きをした。
Kは初めてではないのを知って、妙な安心感を覚える。
「兄ちゃん、こいつは俺のダチだ。混ぜてくれ」
男達は初めこそ僕を警戒していたが、Kの紹介で警戒心を解く。
場の雰囲気のおかげか、すんなりと受け入れてくれた。
Kが兄ちゃんと呼んだ男は大勝ちをしている男であり、余裕があるためか僕にあれこれと指図をする。
そのおかげもあって賞金は十倍、二十倍と膨れ上がっていく。
元が取れるまであっという間だった。
言い様のない満足感に満たされながら、得意げにKに五百円を返す。
Kは小さく悪態をついた。どうやらKの調子は良くなかったらしい。
自分の札に気を取られてKを気にしていなかったが、Kは、たった今僕が渡した五百円を除くと百円しか残っていなかったのだ。
そしてその金もすぐに底をつく。
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