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「もう、帰る」
不貞腐れた様に呟くKだったが、ぱっと時計を見ると既に八時を回っていた。
外はもう暗い。
普段ならこの時間帯まで外にいる事はない。
帰らなければ。
たった今戻ってきた理性によって焦り、後悔が募る。
既に小屋を出たKを慌てて追いかけ、帰路につく。
隣でKはぶつぶつと文句を言っていたが、一言も耳に入ってこなかった。
なぜこんな事をしたのだろう。
未成年である前にこれはそもそも犯罪なのだ。
やるんじゃなかった。
Kについていくんじゃなかった。
後悔先に立たずとはまさにこの事である。
儲かった金は札となってポケットに入っている。
その重さは、今までに持ったことのあるどんな物よりも重く感じられた。
Kと別れてから家まで走った。
遠くから母が庭でうろうろしているのが見える。
そして僕の姿が見えると急いで駆け寄って来た。
「こんな遅くまでどこにいたの?」
泣きそうな声だった。
「ちょっと友達の家で勉強を……」
咄嗟に嘘をついたが、母と目を合わせられなかった。
目を合わせると全てを見透かされてしまいそうだったからというのも一つの理由だが、主な理由は母の瞳に"汚れ"を映したくなかったからだ。
母の心は子どもの様に清らかだ。
この世には悪いものなど無いと信じて疑わない。
だからその瞳は輝いている。
その瞳の光はどうしても奪いたくなかったのだ。
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