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ただ一つだけ問題がある。
姉さんは女優を目指しているものの演技は壊滅的だ。
だから姉さんと父さんが同じ舞台に立つ日が来るとは夢にも思わなかった。
「Rちゃん頑張ってるからねー」
母は誇らしげに話す。
それに対して僕はモヤっとした黒いものが心の奥で渦巻いているのを感じた。
朝食を食べて、行きたくないなと思いつつ学校に行く。
授業を受けるのは嫌いではない。
ただ、学校にはKがいる。
Kを見ると昨日の事を思い出してしまいそうで嫌だった。
「なあ、今日も……」
席に着くと直ぐにKが寄って来る。
加えて大声で話しかけてきた。
「ちょっと黙れ」
何を言い出そうとしているのか何となく予想はついていた為、言葉が発せられる前にKの口を塞ぐ。
どうせKがやろうとしているのは賭博の勧誘だ。
あんなのまっぴらごめんだ。
Kの口を塞いだまま、廊下に連れ出す。
人がいないのを確認してKを放した。
「んだよ、いきなり何すんだよ」
Kは不機嫌そうに呟く。
「教室で昨日の事を話すな。昨日は何も分からずにお前に付いていったが、二度と賭博なんかしないからな。もう誘うなよ」
Kは目は点になる。
「もう、やらないのか?」
頷きつつも、Kが何に対して驚いているのか気になった。
「お前さ、もったいないぞ」
「何が」
「才能あるのにさ、やらないのはもったいないって」
「才能……?適当な事言うなよ」
「適当じゃない。兄ちゃんが言ってた」
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