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ep.018 戦火に舞う天使
「何? 待ち伏せだと?」
本部に緊急の通信が入った。すぐさま情報は参謀本部に伝えられ、カイン・マクシミリアン大将の耳に入る。
「は、我が軍の数倍はいると思われます。このまま作戦を決行すれば、敗走は免れないかと、とのことです」
伝令として送られた兵士は敬礼をしたまま、前線からの無線をそのまま再現する。その言葉に飴色のテーブルを囲む参謀たちの顔は渋くなった。
「共和国に筒抜けだったか。ふむ、特殊諜報部隊が動いているという情報があったから当然と言えば、当然か」
「感心している場合ではないだろう!? 物資と兵力を失うのは可能な限り避けるべきだ」
「ならば貴様は我々が撤退すべき、と?」
「ぐ……」
立ち上がって物資と兵力の懸念を主張していた他の陸軍大佐は黙り込む。ドカリと腰を乱暴に椅子に戻した。
「ならば、《死天使》を投入すれば良い」
マクシミリアンは灰色の髪をかき揚げて、足を組み直す。その声で空気に緊張の糸が張り詰めた。
「……あれを使うのか」
「だが、暗殺人形たった一つでこの戦況が打破できるとは思えん」
「その上、小娘だそうじゃないか」
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