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誰も彼女を止められない。身に付けた装備の重さにも関わらず、ナタリアの動きは速い。共和国兵が攻撃を開始した帝国軍に気を取られたわずかな時間で、暗殺人形は敵の喉元に喰らいつく。
跳ぶ。紺に白い差し色の軍服の中に、漆黒の軍服を纏う少女は飛び込んだ。
赤茶色の髪、冷たい空っぽの琥珀の瞳。端正な顔は天使と見紛うほどの美しさ。
「……お、女?」
時間が止まるかのような錯覚に共和国兵は陥った。そして、《死天使》はその名の通り死を呼んだ。
銃声が響く。火を噴いた銃は的確に敵兵の脳天を撃ち抜いた。仲間が静かに後ろに向かって倒れる様に、兵士たちはやっと目の前の少女が帝国兵であることを認識する。
「て、敵──」
声を上げかけた男の頭をナタリアは無表情で吹き飛ばした。硝煙の煙が消えるよりも先にくるりと振り返って、銃の尻で他の兵士を殴り殺す。
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