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それらを一瞥した少女は、顔を動かした。微かな空気がゆっくりと吐き出されて吸われる気配。だらしなく出た腹が膨らんで萎む。
ふ、と小さく息を吐き、少女は小型の拳銃を男の頭部に押し当てた。
パンッ、という小さくくぐもった発砲音。
男の頭部がぐらりと揺れて呼吸が止まる。彼に訪れるのは永遠の沈黙だ。
共和国軍人の呆気ない事切れ。
元々少女がここにやって来たのは、この陸軍少尉が基地の外から出てこないのが理由だった。外に出てくる人間なら、少女ではなく狙撃手が彼の命を奪っていた。
あまりにも保身を優先させる臆病な男に唯一幸せがあったとすれば、それは少女に死を与えられたことだろう。美しい死神に優しく静かな永遠の眠りを痛みなく与えられたのだから。
「任務完了」
少女の唇が言葉を紡ぐ。白基調の軍服をもう一度翻し、男の死骸に背を向ける。
行きとほとんど同じだが、少し軽やかな足取りで少女は廊下を歩く。
静かすぎる。
耳に痛いほどの静けさの中に少女は異常を感じ取った。足を止めて目を閉じ、感覚を研ぎ澄ます。
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