7人が本棚に入れています
本棚に追加
彼らと少女がお互いの存在を知覚したのは同時だった。
白の軍服の男と小柄な少女が交差する。
赤茶の髪が舞う。黒いを男の眉間に据える。
撃つ。
そのままの勢いを利用して少女は頭部を狙った銃弾を避けて、壁を蹴った。高く跳びながら、機械のように冷静に銃口をもう一人に向ける。地面を穿たれた弾痕は無視。男を撃ち抜いて、さらにもう一人。
頭に入れた逃走経路を反芻し、少女は駆ける。滑り込むのは、地下通路。通気口の格子を押し開け、中に躊躇わずに飛び込んだ。
暗闇の中を真っ直ぐ駆け抜けると、空気の流れが変わった。ここから外になる。夜の黒の中で目立つ共和国の軍服を脱ぎ捨て、少女は黒く姿を変える。
少女を監視していた人影があったことを少女は知らない。
「初任務でII級軍事施設か……。異常だな」
銀色の髪に藍色の瞳をした男、いや少年は呟いた。耳に手を当てて、通信機器を作動させる。
『任務完了。暗殺人形の状態は良好だ。これより本部に帰投する』
そう口にした少年の顔には自嘲の笑みが微かに浮かんでいた。
二人が出会うのはまた少し先の話だ。
最初のコメントを投稿しよう!