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知っていた。理解していた筈だった。 だが、悠人の中で何かの糸が切れた。 男の手を握り返す。 「大人って、何ですか」 そして、しがみつくように叫ぶ。 「あんなのが大人っていうなら、俺だって堕ちてやる…!」 「いいね」 男は小さく笑った。 そして握っていた悠人の手を引いて立ち上がらせると、母親が向かった方向に歩いていく。 母と鉢合わせてみたかった。自分の息子が、同じように相合傘をしながら見知らぬ男にホテルに連れ込まれていく――どんな気分になる? 悠人の自虐は声にならず胸の内に渦巻き、母親と出くわすこともなく、男の選んだホテルの一室に連れていかれた。 雨滴に濡れたまま、悠人はベッドに座るよう促された。 「脱がさせてよ」 男が笑った。部屋で見る男は、路地で見たより一層白く儚かった。 美人薄命、という四字熟語が自然と浮かんだ。 「これ、今日で最後の制服なんでしょ? 俺の手で脱がしたいな」
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