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ああ、そういうことするのか。 分かっていた筈なのに、悠人は今更緊張した。 「大丈夫だよ、これは愉しいことだから」 男の手は悠人の学生服のボタンに掛かった。 「大人は狡い生き物だから。皆こうして、快楽に逃れるんだよ」 男は手慣れていた。ボタンは容易く外れ、雨に冷えた悠人の体は男に包み込まれた。 「…狡い……」 男の言葉を反芻する。 母親の残像が訴える――狡い、と悠人の中で何かが弾けた。 「任せてくれていいからね。楽にしてて」 男が耳元で囁く。
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