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「あ、ありがとうございます」
男は悠人を見上げた。なんだかあどけない顔――。年上の人なのに、悠人はそう感じた。
一言で言うと、ここに似つかない人。
路地裏に紛れ込んで来てしまったのだろうか。
「メニューです」
店長が手作りした小さな本型のメニューを渡すと、男はおずおずと受け取った。
「お決まりの頃、お伺いします」
定型文を言い、最後にもう一度笑顔を見せると悠人はカウンターに戻った。
10分ほどすると男は小さく手を挙げ、サンドイッチとコーヒーを注文した。
「少々お待ちくださいませ」
蒼夜にオーダーを伝え、自分はサンドイッチを作る。出来立てのサンドイッチはトマトやレタスが断面を彩り、我ながら上出来である。
「お待たせしました」
男のもとに行きサンドイッチを置くと、「ありがとう」と男は笑った。
そして、吸い寄せられるように悠人の胸元に目をやった。
「鈴木…くん?」
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