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「へ?」
思いがけず名前を呼ばれ、知り合いかと男を見つめる。
男は、あ、いや、と口篭った後に悠人を見た。
「ネームプレートに書いてあったから。僕も鈴木なんだ――だから、ついね」
「そうなんですか」
驚いた素振りを見せながら、そんなことかと内心で溜息をつく。
鈴木なんてありふれた苗字だ。その共通点をわざわざ口に出す鈴木さんのほうが珍しい。
「鈴木悠人っていいます」
話を繋ぐため、悠人は名乗った。
「悠久の悠に人で、悠人。ゆうと、って読まれますけど、はるとです」
言い慣れた自己紹介をしたのは気まぐれだった。
「はるとくん……」
男はぽつりと呟き、悠人を見上げた。
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