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時は遡り、高校を卒業した日。悠人は大人の世界へ足を踏み入れた。
2年前は桜の開花が早く、卒業式にはほぼ散り切ってしまっていた。
しかも、大雨。
卒業式の後、撮影には不向きの日であっても、高校の校舎を背景にクラスの皆は笑っていた。
そんな中で悠人は早々と校舎から去り、あてもなく大通りを彷徨い歩いた。
頭の中では自然と、数日前の母親とのやりとりを回想していた。
「卒業式、あるんだけど」
報告のように義務的な気持ちで告げると、予想通りの返答が来た。
「3月はちょっと忙しくてー」
母親は、詳細を聞く前に言い訳をした。
ほぼ女手ひとつで自分を育てた母だが、悠人は尊敬していなかった。
母が多忙なのは事実だが、その「忙しさ」の大半が男関係であるのも知っていた。
母の異性関係は絶えることがない。仮に相手と関係が終わっても、代わりの男を補充すれば満足する。
彼女は、妻でも母でもなく、いつまでも男から構われ愛される一人の女として生きることに夢中な人間だった。
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