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好意の結び目
絡まった関係の糸と鋼を
丁寧に解いて眺める身性
シーラカンスの魚の鱗すら
和らいで溶け消えて削がれてく
綺麗に見え始めた三日月の影
紅茶色の煩悩は透明な盆土産
言葉の隙間 息を吸ってそのまま
歯痒い程に杜撰な夕暮れ 目眩時雨
熱を持った型落ち水槽の内側
独りが染み付いたうつつな幸せ
迷える来夏は今もあくびしている
等間隔のインタールード 終の輪廻
彼処から此方まで色味は煩悩の思念
涼風に映った鈍痛が捩れた涙目
深海に沈んだ解像は鴟尾の片割れ
ランドルト環に似た方向性の差異
喉を塞ぐ大河の一滴 内臓を騙る灯火
点描の生活に安らぎ 結び目の無い心
餅を知らない白兎 籠の中の虫酸
晦渋な言霊と惜別 中古メトロノーム
嵩む嘘がまた悪戯へと変わる
錆びた末端から伝染ってく夕立
売れ残りの熟した林檎の果実
花催いの祭事には飴を纏って現れる
鴉の濡れ羽と同じ髪色 はにかんだ横顔
輝く碧に 飴で固まらない紅く喋る果実に
今静かに この心痛を固結びにして
ただ見蕩れていた 酷く絡まっていた
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