第一章 短い結婚生活

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曾祖父は誰にもこの家を譲らなかったらしく、彼が病院に入ってからはずっと空き家になっていたそうだ。 そういう私も今回、初めて来る。 「わるいな」 玄関の前でタクシーが止まる。 そこでは宣利さんが待っていた。 「いえ」 彼に伴われて家に入る。 そこからは記憶が曖昧だ。 倉森のご両親と祖父母、宣利さんは親類縁者の相手が忙しく、どうしていいか戸惑っていた私は典子さんにいろいろ命じられた。 「おい。 なんで君がそんなことをしているんだ?」 「え?」 弔問客へ出すお茶を運んでいたら、ちょうど通りかかった宣利さんに止められた。 「典子さんに頼まれて……」 「姉さんか」 宣利さんはどうしてか、忌ま忌ましそうだ。 「君はそんなことをしなくていい。 そうだな……いいから僕と一緒にいろ。 いいな」 「えっと……はい?」 「こい」 近くにいた人に私が持っていたお盆を押しつけ、宣利さんは私の手首を掴んで歩いていく。 その後は私が同席していいのか躊躇われる席にまで連れていかれた。
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