第0章 予定どおりの離婚

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眼鏡の奥の切れ長な目が、下がったところなどついぞ見たことがない。 ただ、身を包む喪服が妙な色香を漂わせていた。 見つめたところで彼の顔色が変わるわけでもない。 心の中で小さくため息をつき、添えてあったペンを取った。 「……わかりました」 淡々と目の前の書類を埋めていく。 この生活ももう終わりなんだ。 思ったよりもよかったんだけれどな。 でも、仕方ないよね。 そういう約束だったんだし。 「じゃあ、これは僕が提出しておく。 引っ越しは急がなくていい。 新居の都合もあるだろうし。 あれなら僕が準備させてもらう」 そうか、離婚したんだから、もうここにはいられないのか。 「いえ、そこまでやってもらうわけにはいかないので。 実家においてもらえると思うので、連絡して今週中には出ていきます」 「そうか」 彼の返事は短く、それだけだった。 「じゃあ、私は先に休ませてもらいますね。 なんか、疲れちゃって」 笑って誤魔化し、その場を去ろうとする。 私の気持ちを彼に、知られてはいけない。 「待て」 「え?」
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