第一章 短い結婚生活

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ゴミチェックする私を家政婦さんだって苦笑いしていたし。 しかし飲食業の娘、しかも人々をお腹いっぱいにして笑顔にしたいなんて理念の企業だからか、人様がきちんと食べているのか気になるのだ。 「よしっ」 宣利さんにごはんを食べさせよう。 自分勝手にそう決めた。 翌日は近所のスーパーでメニューを考えながら買い物をする。 今までは自分ひとりだから好きなものを作っていたが、今日はそうはいかない。 見栄えとバランス、味も考えなければ。 しばらく悩んでメインにカレイの煮付け、ポテトサラダにほうれん草のおひたし、キノコと玉子の味噌汁にした。 帰ってくる予想時間を見据えながら調理する。 けれどできあがって一時間経っても帰ってこない。 「遅いなー」 とはいえ約束をしているわけでもない。 時間が経つにつれて、もしかして今日は接待だったんだろうかと不安になっていく。 「あっ」 そのうち、玄関の開く気配がした。 ダッシュでリビングを出る。 部屋に入られる前に捕まえなければならない。 「おかえりなさい!」
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