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黙って私を見下ろしている彼がなにを考えているのかわからない。
けれど断られるのが怖くて、一気に捲したてる。
「食事、作ったんです。
一緒に食べませんか」
しばらく私を見つめたあと、彼は面倒臭そうに大きなため息をついた。
「だから僕のことは気にしなくていいと……」
「その。
つい、作り過ぎちゃったんです!
だから、食べてくれると嬉しいなー、……なんて」
必死に挽回を図ったが、眼鏡の奥からこちらを見る冷たい目にたじろいだ。
おかげで最後は小さな声になって消えていく。
「……はぁーっ」
さらに彼にため息をつかれ、びくりと身体が震えた。
「わかった。
食べるからそんな目で見るな」
「え?」
そんな目と言われても、自分がどんな目で彼を見ているのかわからない。
「着替えてくる。
あれだったら先に食べていてもいい」
私の脇をすり抜け、宣利さんは自分の部屋へと向かった。
「あっ、じゃあ温めておきますね!」
閉まるドアに向かって声をかけ、私もキッチンへ行って料理を温め直す。
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