第一章 短い結婚生活

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とりあえず、食べてくれると言った。 それだけで一歩前進だ。 そのうち、着替えた宣利さんがダイニングに来た。 「お口にあうかわかりませんが」 ご飯をよそい、温めた料理と一緒に並べる。 椅子に座った彼は、無言で食べ始めた。 私も前に座り、食事を口に運ぶ。 ……き、気まずい。 誘っておいてなんだが、無言の食卓は精神に堪える。 「その。 お味は、どうですか? 薄かったり濃かったりしないですか」 ぴたりと箸が止まり、じっと彼が私の顔を見る。 けれど少ししてまた、食べだした。 「え、えっと……」 それ以上、尋ねる勇気もなく、もそもそと私も食事を続けた。 「ごちそうさま」 食べ終わった宣利さんが、丁寧に手をあわせる。 「美味しかった」 椅子を立った彼は手早く食器を流しに下げ、ひと言そう言って去っていった。 「……へ?」 ひとりになり、間抜けにも変な声が出る。 渋々、食事をしてくれたのだと思っていた。 しかし、「美味しかった」って? ただの社交辞令? それとも喜んでくれた?
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