第一章 短い結婚生活

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ううん、あれだけ私に無関心だった彼が、社交辞令でも美味しかったと言ってくれたのは嬉しい。 「よーし、これからも張り切って作っちゃうぞー」 せめて会社の同僚程度の関係くらいにはなって、居心地のいい生活をゲットするのだ! それからも毎日、食事を作って宣利さんの帰りを待った。 「ごちそうさま。 美味しかった」 最初のうちこそ渋られたが、最近は根負けしたのか文句を言わず食卓に着いてくれる。 食事中はいつも無言だが、食べ終わったあとは手をあわせてそう言って、食器を下げてくれた。 「今日も完食、と」 料理の残っていないお皿を見て、にんまりと笑う。 宣利さんは必ず、残さず全部食べてくれた。 きっとそれなりに美味しいと思ってくれているんだと私は思っているんだけれど、どうだろう? でも、社交辞令だったとしても、私を気遣ってくれている気がする。 それに思ったことをはっきり言う彼のことだ、マズかったり嫌だったりしたらそう言うはずだ。 「明日はなんにしようかなー?」 この頃は毎日、夕食を作るのが楽しくなっていた。
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