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「今日は接待かなー」
毎日夕食を作っているが、たまに無駄になる日がある。
宣利さんの予定を確認しているわけではないので仕方ない。
「これはもう、いらないなー」
十時を回って帰ってこないときは諦めてひとりで食べるようにしていた。
彼の分はあとでラップしてしまって、明日のお昼に回す予定だ。
ごはんを食べていたら玄関が開く気配がした。
宣利さんが帰ってきたようだ。
「あっ、おかえりなさい」
いつもは直接部屋へ行くのに、彼がダイニングに顔を出して驚いた。
「今頃食べているのか」
「そう、ですね」
さらに珍しく質問をされた。
明日は雨なんだろうか。
「これは僕の分?」
「はい……」
彼がテーブルの上に並ぶ食事を見下ろす。
しかしレンズの奥の目からはなにを考えているのか読み取れない。
「……はぁーっ」
大きなため息をついたかと思ったら、ノットを何度か揺らしてネクタイを緩め、彼は椅子に座った。
そのまま、箸を取って食べ始める。
「えっと……」
「作ったのなら食べないともったいないだろ」
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