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それはそうだけれど、食べて帰ったのなら無理して食べる必要はない。
それに作ったのは私の勝手だ。
「もしかして今までも、僕の帰りが遅い日も作ってたのか」
「……はい」
「うん、わかった」
それっきり彼は黙って料理を食べている。
てっきり、怒られるのだとばかり思っていた。
それとも呆れ果ててなにも言えない?
いや、もしかしたらただの事実確認という可能性も捨てきれない。
なにしろ宣利さんはいつも真顔だから、なにを考えているのかわからないのだ。
「ごちそうさま」
今日も食べ終わり、丁寧に彼が手をあわせる。
しかしいつもと違ったのは、食器を避けて携帯を手にした点だ。
「君の携帯、貸して」
「はぁ……?」
なにをしようというのかわからないが、渋々自分の携帯を渡す。
どのみち、ロックがかかっている。
「ロック、解除して」
「えっと……」
受け取った携帯を彼が戻してくる。
さすがにそれはたじろいだ。
私の素行調査でもしようというんだろうか。
「早く」
「……はい」
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