第一章 短い結婚生活

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じっと、携帯の画面を見つめる。 これは今日みたいな日、このアプリで確認して食事を用意して待たずに食べればいいということですか……? 「なんだ」 気づいた途端、おかしくなってくる。 もしかしたら本当は、私の顔を見たくないほどこの結婚が嫌だったんじゃないかと思っていた。 けれどこうやってちゃんと気遣ってくれている。 少しずつ歩み寄っていけば、彼もこうやって返してくれるかもしれない。 そうすればそのうち、打ち解けられるかも。 でも、そこまで時間があるのかはわからないけれど。 それからは宣利さんのスケジュールを確認しながら食事の用意をするようになった。 「かえった」 「おかえりなさい」 この頃は帰ってきたら声をかけてくれる。 ちなみに出ていくときは私の部屋をノックだ。 これだけでも今までに比べたら大きな変化で、嬉しくなってしまう。 「明日、実家に行かなくていい。 僕から連絡を入れておいた」 「えっと……」 別に共有する義務もなかったが、一応連絡のつもりでスケジュールアプリに宣利さんの実家へ行く旨、入れておいた。
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