第0章 予定どおりの離婚

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そんなの、彼に迷惑をかけるだけだってわかっていた。 もし、そうなったとしても彼に告げるつもりもない。 「そういえば……」 達するとき、宣利さんは私の名を呼んでいた。 プライベートで、名前でよばれるのは初めてだ。 いつもは〝君〟なのに。 なんだったんだろう、あれ? 一晩明けて実家に連絡した。 離婚したと聞いてもなにも言わなかった父は、事情を察していたのかもしれない。 引っ越しは宣利さんがお任せパックを手配してくれた。 最後までお手間を取らせて本当に申し訳ない。 引っ越しの日、宣利さんはいなかった。 「……見送り、してくれないんだ」 わかっていたはずなのに、落ち込んでいる自分がいる。 宣利さんにとって仕事が一番、私は……何番だったんだろう? 離婚してしまった私なんてもはや、ランキングの対象ですらないんだろうけれど。 「おい、行くぞ」 「あ、うん!」 迎えに来てくれた父の車に乗る。 「バイバイ」 バイバイ、一年間だけの我が家。 バイバイ、宣利さん。 もうここに戻ってくることも、会うこともないだろうけれど。 流れていく窓の外をぼーっと眺めながら、この一年――出会いから一年半の生活を思い出していた。
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