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「もう!
お父さんも花琳ちゃんもそんなところで話さなくてもいいじゃない」
奥から出てきた母が、おかしそうにころころと笑う。
確かに私はまだ靴を履いて突っ立ったまま、父は玄関マットの上に正座なんて状態でする話ではないだろう。
「ほら、さっさと上がって。
お腹空いてるでしょ?
先にごはんにしちゃいなさい」
「えっ、あっ」
やっと上がり框を上がった私の背中を、母が押していく。
「今日は花琳ちゃんが好きなロールキャベツよ。
チーズのせて焼いておくから、早く着替えてきてねー」
「あっ、うん」
強引に見送られ、自分の部屋へと行った。
いつも空気の読めない母だがこれで一旦、冷静になる時間ができた。
グッジョブだ。
着替えながら少ない情報から状況を整理する。
相手はあのTAIGAの御曹司で、父は従業員のためだと言っていた。
「従業員のため……?」
そこで、なんとなく状況が見えてきた。
きっと会社を立て直すためだ。
だったら、受けてもいい。
いや、父の、会社のためになるんなら、ふたつ返事で引き受けたいくらいだ。
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