５０％

speed of sound

　彼女の緊張が見てとれる。静かに燃えている。左手に器具を構え、黒いモノに当てる。
　すぐに反応した。表情を変えずにスピードを上げてイク。色白ですらっとした肢体に茶髪の眼鏡。そこそこ若いだろうに手慣れている。場数を踏んでいるのだろう。

　ピッ「オフシールです」ピッ「オフシールです」ピッ「オフシールです」ﾋﾟｯ「ｵﾌｼｰﾙﾃﾞｽ」ﾋﾟｯ「ｵﾌｼｰﾙﾃﾞｽ」ﾋﾟｯ「ｵﾌｼｰﾙﾃﾞｽ」ﾋﾟｯ「ｵﾌｼｰﾙﾃﾞｽ」ピッ、ピッ、

　値下げ商品ではない７０円の水２本。山は越えた。表情を変えぬまま、ゆっくりと仕上げに入る。

　ピッ、「オフシールです」
　ピッ、「オフシールです」

「１２４６円になります」

　この配慮は逆に惨めな気持ちにさせる。別のおばちゃんには「今日はごめんね、弁当なくて」と謝られた事がある。

　謝らないでくれ。弁当はあるじゃないか。半額以外の弁当が。