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「謝って。……私だけじゃなく、春菜にも謝って」
(……確かに春菜も……春菜が私にして来た事も、簡単には許せない。でも――)
私は知っている。
春菜は春菜なりに、シルウィスを愛していたことを。
だからこそ、この仕打ちはあまりにもあまりではないか――。
私は憎しみと怒りを込め、シルウィスをきっと睨みつけた。
瞬間、シルウィスの表情が豹変する。
「貴様、ただの道具の分際で……私を……この私を殴ったな?!」
彼がそう告げると同時――光に包まれ、変貌していくシルウィスの肉体。
優雅な着物を身に纏い、大きな刀を握り、後光の差しているその姿は、まるで日本の神そのものの様にも見える。
「見たか……!これが、私の本当の力……私の家の力だ……!」
シルウィスは刀を振り上げながら、醜悪な笑顔を浮かべる。
「我が家は代々、日本や世界中の神の権能を持つ女を集め、神の加護を一身に集めて来た……!これが、その姿だ……!」
叫ぶ様にそう告げると、何度も刀を振り下ろし――執拗に私を捕えようとして来るシルウィス。
「秋乃……お前の能力は見たことがない。その素晴らしい治癒の力は、私の家に大きな繁栄を齎すだろう!大人しく私のものになれ!!!」
攻撃の能力など一切持っていない私は必死に逃げ惑う。
ファイフや藍道も援護をしてくれているが、異様に私に執着するシルウィスは、攻撃を受けてもなお、笑いながら私を追いかけて来た。
「お前は私のものだ、秋乃!私の妻になるのだ!この全能神シルウィス様の妻に!」
シルウィスがそう叫ぶと同時――、
「さて、それはどうかな」
涼しげな声が辺りに響き渡る。
同時に、私の体がふわりと優しく抱き上げられた。
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