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「お前、来月この家から出て行きなさい」
唐突に、父親の再婚相手である2人目の母からそう言われる私。
彼女は私の目の前に、1枚のカラフルなチラシを突きつけた。
「この高千穂に新しく出来た学校でね、生徒を募集しているそうですよ。お前も来月から高校生ですし、ちょうど良い。そこの学校に入学しなさい」
「ちょ、ちょっと待ってください!お母様……!」
突然すぎる継母からの申し出に、私は頭が回らないまま、なんとか言葉を絞り出した。
「私は、婚約者のシルウィス様と同じ学園に通い、両家の為に仲を深める……その予定だったのでは?!そんな私が突然いなくなっては、シルウィス様も驚かれてしまいます!何より約束を反故にしたとあっては両家の間に溝が生まれてしまうのではないでしょうか……!」
――家の為……いや、昔から恋慕った婚約者と離れない様にする為、継母に必死にそう言い募る私。
が、彼女はゆっくりと……しかし、ニヤリと嫌な笑みを浮かべた。
「貴女、何を言っているの?」
継母がそう告げると同時、私達が今いる屋敷の今の襖がゆっくりと開いていく。
そこに立っていたのは――。
「シルウィス様?!春菜?!」
私の大切な最愛の婚約者とーー彼の腕に自身の腕を絡め、得意げに微笑む義理の妹の姿だった。
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