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「お姉様。貴女は捨てられたのよ。シルウィス様はね?地味で無能なお姉様より、若くて可愛くて、能力も華やかな私を選んだの」
膝から崩れ落ちた私を見下ろし、艶然とそう語る春菜。
一方、春菜と腕を組んでいるシルウィス様も、私を見下ろしたまま……至極冷たい口調で、こう言い放った。
「そういうことだ、秋乃。君は強い神の力を継ぐ者ということなので婚約したが……残念ながら、その力が発現することはなかった。つまり、もう君は用済みなんだ」
(用済み……?私が……?)
私の心を、深い深い絶望が黒く塗り潰していく。
しかし、私は胸の前で手を組み……必死に我が身と心を支えながら、声を振り絞った。
「ですが、シルウィス様……!あなたは、初めてお会いした時、私を一目で好きになった、と仰って下さったではありませんか……!私は、あなたのあの時の笑顔に支えられ、生きて来たのです……!」
だが、私の初恋の人は――そんな私を冷たいブルーの瞳で見下ろしたままふっと嘲笑を浮かべた。
「それはそれは。だが、あの時私が好きになったのは貴女ではない。正確には、この……貴女の家の力だ。そうでなければ、お前の様な無能で地味な女、誰が声をかけるものか」
凍えてしまいそうな位冷たい声音でそう告げるシルウィス様。
彼の隣では、春菜がそれはそれは愉快そうにクスクスと笑っていた。
「ということだそうよ。わかった?お姉様。あなたは邪魔者なの。この家もシルウィス様も、これからはもう、全て私のものなのよ。わかったら、さっさとその学園に入学して……寮に入ったまま、二度と帰ってこないで頂戴」
そういうが早いか……勝手に私の部屋から持ち出して来たのか、私の旅行鞄を思い切り投げ付けてくる春菜。
それは私の額に当たると、痛みと共に消えない傷を心に深く刻み込んだ。
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