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「……は?」
(この人は一体何を言っているの……?)
同じ日本語を話している筈なのに、シルウィスが言っている意味が全くわからず、その場で固まる私。
すると、彼はそのまま私の手の甲に口付けをしようとして来たではないか。
「いやっ……!触らないで……!」
私は思わず彼の手を払い除ける。
しかし、シルウィスは相変わらず笑顔のままだった。
「秋乃?誤解しないでほしい。私が愛しているのは、前からずっと君だけだったんだ。春菜と婚約したのは、君を試す為だったのだよ」
「はぁ……?!」
あまりに支離滅裂すぎる言い訳に眩暈がしそうになりつつ、彼から距離を取る私。
と、シルウィスは薄気味悪いほどの笑顔を浮かべたまま、じりじりと私との距離を詰めて来た。
「私はね、君には力があると信じていたんだ!だから、君の能力が早く開花する様に試練を与えてあげていたんだよ!」
半ば恍惚としながら――どっぷりと自分に酔いがら、堂々とそう語るシルウィス。
私は、気持ち悪さをなんとか抑え、つかつかと彼に歩み寄った。
「秋乃!私の愛を理解してくれたんだね!」
嬉しそうにそう語りながら、シルウィスは大きく両手を広げる。
私はそんな彼を正面から見据えたまま、勢い良く右手を振り上げると――彼の頬を大きく引っ叩いた。
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