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この子天才なんじゃない? 50年に一度の神童だろうね。生まれつき出来が違うんだわ!
それが、小さな頃から当たり前のように言われ続けた、あたしの評価だった。
はい、神童も大人になればただの人。大人になる前にそれに気づいただけあたしはエラい。
「葉菜、鉢植えにお水やってね! 玄関前を掃くのも忘れないで!」
そう言ってお母さんは毎日せかせかと仕事に出かける。朝食は作ってくれるけど、後片付けはあたしだ。お父さんは単身赴任。
ああめんどくさい。
お母さんの目の下にクマができているのは知っている。忙しすぎてあたしがお手伝いしなくちゃしんどいんだろうってこともわかってる。
けれどあたしは何もかもにやる気が出ない。
自分でも神童だとウカツにも信じていた頃は、勉強もお手伝いも楽しかった。
でも。
有名私立の中学に受かってから、あたしの成績はぐんぐん下がった。いや、周りがぐっとハイレベルになった分、相対的に順位が落ちたってだけのことだった。
それがあたしの立ち位置。ビリから数えた方が早いところ。
そう気づいたら、何一つ面白くなくなった。何をやってもどうせダメなら、何もやらなくても同じじゃんね。
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