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ため息をついたとたん、何もないところでつまづいた。ぎりぎりバランスを取っていた空箱や本のタワーが、呼吸一つの時間差で崩れた。
もう。廊下にこんなの積み上げたの、誰?
……あたしだ。
雑に拾い集めると、子供用の絵本や古いノート。表紙に下手くそな字で「たのしい絵日記」などと書かれたものもあった。
こんな過去の栄光、見たくもないとゴミの山に混ぜたんだっけ……それすら忘れていた。忘れたままってことにして、またそのタワーに戻した。
お水、お水。
じょうろに水道水を流し込んで庭に出てみれば……、鉢植えの苗がぐいんと伸びていた。そしてそのツルが、ぎゅるんと竹ぼうきに巻きついていたのだ。
あたしが小学生の時に使ったその鉢は空っぽになっていて、お父さんがもったいないと言って種をまいた。
……そんなもの、あたしはうれしくなかった。いつでも側にいて本を読んでくれたりするだけでよかったのに。
いつの頃からか、お父さんのすることはあたしの希望とはズレてしまっていた。
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