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「なあに? 最近早起きなのね、葉菜」
お母さん、朝食準備中。目玉焼きとトースト。そしてスープの粉を入れたカップに注ごうとして……牛乳のつもりで麦茶をどぼどぼ。ギャッと髪が逆立った。
「ああもう!」と情けない顔になるお母さん、……一人で忙しすぎるんだよね。ああ水やりめんどくさいなんて思ったりしてごめん。
しゅんとしたお母さんに元気になってほしくて、「あのねあのね。面白いんだよ」と手を引いた。
その先には、ばあさんがすでにいた。もう道一つ向こうまでツルが進んでいた。
「遅いじゃないか。今にもこれを『アサちゃん』に差しかけてやるとこだったよ」
「ア……アサちゃん?」
ばあさんはいつの間にかうちのそのアサガオを「アサちゃん」と命名していた。
お母さんは面食らってあたしを見、それからばあさんに向かって愛想笑いを急ごしらえ。難クセつけられないかと身構えたらしい。
ばあさんは、今日は竹刀? を持っていて、あたしがお母さんと駆けつけるや否やそれをアサガオに差し出した。
待っていてくれたんだ、あたしが来るまで。
今まで意地悪ばあさんだと思ってたけど、こうしてみるとイメージ全然違う。ばあさんじゃなくて、「あたしの名? マチコってんだよ」と言われたので、これからはマチコさんと呼ぼう。
アサちゃんは、すぐに竹刀に食いついた。ぐるぐるっとすごい勢いでその長さを制覇すると、……その先が、くいっと地面を指さした。そこに。
――カバン?
そんな見つけにくいぼうぼうの雑草の影に。落とし物かな。
あたしはピンときた。同時にマチコさんもポンと手を叩いた。
シャキシャキーン! と、右側にこのカバン、左側に昨日のオッサンの画像を置いて、ススス、と重ね合わせるイマジネーション。ぴたりとハマる。
これ、あのやつれたオッサンのカバンで決定!
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